それは僕が大学3年生の冬、静岡県にある離島で年末年始だけの短期のリゾートバイトをしていたときのことです。
同じ職場で働くリゾートバイトのルームメイトの佐藤さん(仮名)が夜中に髪の毛をセットしながら、
「あんな。今からフロントの田中ちゃんに会ってくるねん。笑」
と自慢げに言ってきました。
フロントの田中ちゃん(仮名)は、その年の新入社員で22歳の可愛らしい女の子。
僕らはレストランでの勤務なので一緒に働くことはないのですが、タイムカードを打つときなどにすれ違うと、部屋に帰ってから
「いや〜、田中ちゃん見れたから、今日はいい日だ。」
と報告し合うぐらい、みんなの憧れの対象でした。
佐藤さんと僕は同じシフトで働いているし、ご飯も一緒に食べているので、ひとりだけ田中ちゃんと仲良くなるなんて抜けがけは出来ないはず。
「いつの間に田中ちゃんと仲良くなったんですか?ずるいんですけど。」
と聞くと、佐藤さんはドヤ顔で
「このアプリで田中ちゃんとマッチしてん。」
と、『Ti○der(出会い系アプリ)』の画面を見せてくれました。
「この島は半径4キロやろ?
せやから、検索範囲を4キロにしたらこの島におる人だけが出てくるねん。
実は昨日田中ちゃんとマッチングしてメッセージやりとりしてて、今から会うことになってん。」
そう言い残し、佐藤さんは部屋を出て行きました。
そして、その日彼は部屋に戻ってきませんでした。
翌朝出勤時間ギリギリに佐藤さんが部屋に戻ってきてひとこと。
「田中ちゃんめっちゃエロかったわ。笑」
社員さんは個室の寮に住んでいるので、その部屋に入れてもらって色々と楽しんだらしい。
島にはそのホテルの職員以外は若者がほとんどいない上に、ホテルの正社員の男はパッとしない人ばかりなので、リゾートバイトとして短期で来た男をとっかえひっかえしているらしい。
あんな可愛い顔して、、、
その夜、僕も佐藤さんと同じアプリをダウンロードして検索範囲を4キロにすると、田中ちゃんが出てきました。
もちろん右スワイプ(お気に入り)。
あとは田中ちゃんが右スワイプしてマッチするのを待つだけです。
・
・
・
田中ちゃんを右スワイプして1週間が経ち、リゾートバイトを終える日を迎えたのですが、僕が田中ちゃんとマッチすることはありませんでした。